« 和歌劇「月と黄金」 | トップページ | 晩秋の旅 ~大阪吹田・京都広隆寺 »

和歌劇 「月と黄金」 その2

下の記事のつづき・・・

 

第二部 和歌劇「月と黄金」

あらすじ

源氏と平家の戦いによって混乱する日本をひとつにまとめるため

僧侶・重源は、戦乱で焼け落ちた大仏の再建事業を始めた。

一方、高野山で重源と共に仏教を学んだ西行は、人々の日常の

営みの中にこそ価値があることを歌に詠みながら諸国を巡り歩いていた。

重源の依頼により、西行は大仏の鍍金に使う金を調達するため奥州に

赴き、その途上の鎌倉で、源義経の愛妾・静御前に出会う。

 

 

 静御前は、平家を滅ぼし都に凱旋してきた源義経に一目会っただけで

恋に落ち、兄・頼朝から命を狙われて逃避行を始めた義経に付いて

行こうとするが、吉野・大峰山の修験者に阻まれてしまう。その後、

頼朝の命令により鎌倉に護送された静御前は、源氏の守護神である

八幡神を祀る神殿で白拍子の歌と舞を披露する様に命じられるが、

静御前は愛しい義経を思う気持ちを芸能に昇華させてその神に奉納した。

 

(以上、パンフレットのあらすじより)

 

【西 行】

死出(しで)の山 越ゆる絶え間はあらじかし

亡くなる人の数続きつつ

(西行聞書集 より)

 

【重 源】

釈迦の月は隠れにき慈氏の朝日はまだ遥か

そのほど長夜の闇きをば法華経のみこそ照らいたまへ

(梁塵秘抄 今様 十八)

 

【静御前】

思の津に船のよかれし星のまぎれ推して参ろう(ヤレコトットー)

亀は万劫 鶴は千歳 経る君は如何経る万歳こそ住め(ヤイコトットー)

(郢曲抄より)

 

【静御前】

いにしへの倭文機帯を結び垂れ誰れといふ人も君にはまさじ

(万葉集 2628番)

 

義経への熱烈な思いなんでしょうが

まさに「目がハート」ってところでしょうか~?なんだか可愛らしい♪ 

 

【人 々】

讃岐の松山に松の一本歪みたる

捩りさの捩りさに猜うだるかとや直島の

さばかんの松をだにも直さざるさん

(梁塵秘抄 巻二 雑 431)

 

【西 行】

氷をたたきて水掬び露を払ひて薪採り

千歳の春秋を過ぐしてぞ一条妙法聞き初めし

(梁塵秘抄 巻二 提婆品 112)

 

【西 行】

笹深み霧越す岫を朝立ちて靡き煩ふ蟻の門渡り

(「山家集」下巻・雑1116番)

 

【西 行】

屏風にや心を立てて思ひけん行者は還り稚児は泊りぬ

(「山家集」下巻・雑1117番)

 

【西 行】

分けきつる小笹の露にそぼちつつ干しぞ煩ふ墨染の袖

(「山家集」中巻・雑918番)

 

【西 行】

身に積もる言葉の罪も洗はれて心澄みぬる三業の滝

(「山家集」下巻・雑1118番)

 

【西 行】

隠れにし君が御影の恋しさに月に向かひて音をや泣くらん

(「山家集」中巻・雑793番)

 

今は亡き崇徳院を月に重ね咽び泣く、昔の女を忘れられない

一途な恋のイメージ・・・?? 

 

【修験者たち】

それ山伏といっぱ役の優婆塞の行儀を受け

その身は不動明王の尊容を象り兜巾といっぱ五智の宝冠なり

十二因縁の襞を据ゑて頂き九会曼荼羅の柿の篠懸

胎蔵黒色の脛巾を履き さてまた八つ目の藁沓は

八葉の蓮華を踏まへたり

(謡曲「安宅」より)

 

【静御前】

押ふれど涙ぞさらに留まらぬ衣の堰にあらぬ袂は

(松屋本山家集 恋110首)

 

涙があふれる、というだけのことをこんなに美しく詠めるだなんて・・・ 

 

【西 行】

巣鷹渡る伊良湖が崎を疑ひてなほ木にかくる山帰りかな

(「山家集」羇旅歌)

 

【西 行】

曇なき山にて海の月見れば島ぞ氷の絶え間なりける

(「山家集」下巻・雑1356番)

「空気の澄んだ山から海を見ると月が海面を照らして氷のように見え、

それが美しい(その氷のような冷気こそが人間を始め生物には重要

なのだ)」と菅沼先生は対訳をつけられている。今度深く聞いてみよう~

 

 

【西 行】

朝風に港を出づるとも船は高師の山の紅葉なりけり

(西行 聞書集より)

 

【西 行】

雪解くる しみみにしだくから崎の道行きにくき足柄の山

(山家集 春歌より)

 

【西 行】

吹く風を なこその関と思へども道も塞にちる山桜かな

(源義家「千載和歌集」より)

 

【静御前】

受け難き人の姿に浮かび出て懲りずや誰もまた沈むべき

いかかすべき世にあらばやは世をも捨ててあな憂の世やと更に思はん

(「新古今和歌集」巻十八・雑歌下1749番、1830番)

 

【西 行】

君が代は天の羽衣客に著きて撫づとも尽きぬ巌なるらん

(拾遺和歌集 巻五 賀)

 

 

【静御前】

吉野山峰の白雪ふみわけて入りにし人の跡ぞ恋しき

しづやしづ倭文(しづ)のおだまき繰り返し昔を今になす山もがな 

(吾妻鏡・静御前の歌)

 

足跡までも恋しい・・・かぁ。誰の足跡かもわからないのに?

あなたが踏んだ河原の石を玉のように愛しく思う、っていう歌もあったなぁ。 

身近な、目の前に今あるものに思いを重ね詠むこころって大切なんだね、

きっと。

 

【人 々】

空より華降り地は動き仏の光は世を照らし弥勒文殊は問ひ答へ

法華を説くとぞかねて知る

(梁塵秘抄 法華経28品歌 57)

 

【静御前】

細小蟹(ささがに)の糸に貫く露の玉の懸けて飾れる世にこそありけれ

(「山家集」下巻・雑1514番) 

 

対訳:小さな蜘蛛がかけた蜘蛛の巣の糸についた無数の小さな朝露。

それが朝日に当たりまるで黄金のように輝くのがとても美しい、と語り

合う世の中であってほしい。

 

 

和歌劇のあと、みんなで食事をし、家に帰ってもしばらくは余韻に浸り、

なかなか寝付けずにいた。前回とはまた違った何かを得たような

そんな満足感でいっぱいだった。

こんな風に和歌劇という形で今まで知らなかった歌に触れ

その対訳に助けられながら、ひとつひとつひも解いていくと

「今」わたしが大切にすべきものが見えてくるような気がする。

蜘蛛の巣の歌にも見るように、ごく身近な、つい見過ごしてしまいがちな

小さな自然の美しさにふと立ち止まる心のゆとりを持たねば、とあらためて

思うのであります。そして身近な自然美と今あるがままの心とをリンクさせる

ことで救いにしたり、励みにしたり、あるいは昇華させたりすることができる

のだろう。まだ道半ばの私の歌もそんなものに近づけるよう詠み捨てつつ

心の糧として行けたらなどと思う。

 

 

 

|

« 和歌劇「月と黄金」 | トップページ | 晩秋の旅 ~大阪吹田・京都広隆寺 »

俳句・短歌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 和歌劇 「月と黄金」 その2:

« 和歌劇「月と黄金」 | トップページ | 晩秋の旅 ~大阪吹田・京都広隆寺 »