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短歌 ~9月

落日のやうにフェードアウトした戻ることなきページをめくる 九月一日

ひたひたとわれに九月はやってきて肩に手を置きうんとうなづく 九月一日

黄昏の文色なき道とぼとぼと物思ひなど連れて彷徨ふ 九月一日

ほの白く薄暮の空に浮かぶ月のたりのたりと夜を渡りぬ 九月二日

君の途の前のみ見据えいざ進め道なき道を切り拓きゆけ 九月三日

この蒼き無限のような高き空いつかはきっと何か掴まん 九月三日

蕎麦の花その身をうずめ抱きとめぬ朝露の珠水晶の如く 九月三日

抱えきれぬブルーサルビアの花束にアタシを添えて君の窓辺に 九月三日

この部屋の唯一の光ケータイの四角い窓に心並べて 九月四日

迷ひ子のやうに彷徨ふこの夜にとりとめもなく足跡残し 九月四日

夜は白み遠耳に聞く朝鳥の切なき声ぞ我が胸のうち 九月五日

あかね雲鏡の如く映しつつ東山より月ぞあらはる 九月五日

闇の窓いまぼんやりと解けゆきこころに映る一輪の花 九月五日

明け切らぬ薄闇の指の冷たさは人恋しかな刹那耐へかね 九月五日

なげきつつ眠れぬ夜を数へても逢瀬の夜は永遠の夢 九月五日

西窓にひとり佇みこの月を胸刻みゐし東雲を背に 九月六日

つれなくも去りゆく月の後ろ髪引きたし魅けずはや朝ぼらけ 九月六日

あの星を抱き西閨かたぶきぬ月の姿に絆さるる宵 九月六日

持ち物はバッチリ!歳時記、電子手帳、芭蕉句集に短歌入門 九月七日

この道を吾子と歩めばよみがえるさまざまのこと宝物だね 九月七日

秋麗むらだつ雲に月抱かれしらつゆ結ぶ草に虫鳴く 九月七日

東雲の野辺咲き初むる草の花白露宿り煌きをりぬ 九月七日

何もかも五感に刻みゆったりと深呼吸する今朝の秋かな 九月八日

吾のそばで娘の歌ふ鼻歌もこころの隅にお守りとして 九月八日

月星は取るに足らないこの想ひそっと掬ひて眠れと諭す 九月八日

澄める夜の月ほの白く優しかり君のこころのやうなゆかしさ 九月八日

秋ゆけば月待つ時のいとたのし欠けゆく月もまた美しき 九月八日

ドクターとナースの集う朝の窓強き眼差し冴えとよむ声 九月九日

曇り窓に行き交う燕眺めをりせわしき動く世など思ほゆ 九月九日

時待ちてただあてもなくロビー来し枝垂れ零るる白き花見む 九月九日

病棟の窓より眺むる白壁の白極まれり今日は佳き日と 九月九日

夢に落ち夢より醒めし命あり今生きている生きていること 九月十日

今宵また天つみ空を星渡り遙か野末に蟲の音響く 九月十一日 

つらつらと手紙したためあの人へ想ひの丈の海より深き 九月十二日

秋風にゆふべの雲は雨となりわれの指先慕ひて尋ぬ 九月十二日

その指の先より出でしプロ意識優しき時も厳しき時も 九月十二日

やうやうに痛み薄れて歩みゆき計ればしばし空喜びし 九月十二日

久方に髪を洗へば彩雲の身を浄むればさやき風立つ 九月十二日

病窓に深みゆく秋探し見て外気触れたし身を案じつつ 九月十二日

息災は云ふに及ばずさればとて病に学ぶことの多かり 九月十三日 

この高き空に心を投げ上げて行方見つめて過ぎる秋の日 九月十三日

おのおのがしばし耽りて物思ひ空調のみの午後の病室 九月十三日

本日は日曜お見舞いラッシュにて笑いっ放しが傷のリハビリ 九月十三日

失ひしものは戻らずおとなひしものは拒まずわが糧とせむ 九月十四日

良き歌は授かりしもの無防備なわれに天より降りて来るもの 九月十四日

痛みなきことの喜びこの上なし今望むこと何ひとつなし 九月十四日

小鳥来ぬほつえに朝の風つれておのおの歌ふそれぞれの歌 九月十四日

立ち去りぬ人が心に置く歌は秋の陽の中やさしく揺れる 九月十四日

しとと降る雨に打たれし白萩の枝たをやかや花もたわわに 九月十五日

なだらかな遠き山々狭霧抱き墨の絵のやうに淡く仄めく 九月十五日

その昔敬老の日って決まってた「の日」の意味など考えている 九月十五日

ひと雨がひと秋つれてやって来て街に里にとそっと置いてく 九月十五日

雨残る窓に滲みし街の灯のかすかに揺れて秋の風見ゆ 九月十五日

様々な人間模様垣間見たこの十日間に今夜ピリオド 九月十六日

秋津とぶ色なき風を刺し綴る夕の調べを指揮せむ如く 九月十六日

ビードロの紅透きとほり秋の陽はほほ笑む君のやうにたゆたふ 九月十六日

やはらかき真白きベール霧の森声のみぞする姿はいづこ 九月十六日

紫のまだ明けきらぬ東窓あらゆる空を飛びゐしツバメ 九月十六日

さまざまな愛を抱きしめ病棟は二十四時間うごめいている 九月十八日

人生の縮図のごとき病室の人流れゆく時の狭間に 九月十八日

病室の気を浄化せし見舞い花刻一刻としなだれてゆく 九月十八日

初物もただ坦々と食べすすむ病院食の青きミカンよ 九月十八日

このところ里の景色は変わらねどその吹く風に深む秋知る 九月十八日

業終へて吾子帰り来しぼそぼそと呟きながら余力尽きたる  九月十九日

法師蝉ひとしきり鳴き黙り込む何想ふ君歌へや歌へ 九月十九日 

指先に秋は来にけり我が指でそっと包んでじわっと君恋ふ 九月十九日

おむすびをいっぱい握って送り出す愛しき吾子は腰パン気取り 九月十九日

忍び来る朝夕の風くるぶしの靴下じゃもう守りきれない 九月十九日

秋彼岸待ち咲き初めし曼珠沙華命の焔燃やし尽くしぬ 九月二十日

秋の陽はなんてやはらか一枚の絵画のやうな今朝の窓かな  九月二十日

深みゆく秋に言葉を探しても行方不明と云ふか失踪 九月二十日

鍋物にしようかなどと夕風は献立さえも変える冷たさ 九月二十日

白くってつい誘はれて秋の午後野にもまばゆき秋の陽遊ぶ 九月二十日

立ちのぼる日本茶の湯気見つめゐし両のてのひら包むうれしさ 九月二十一日

秋風に雨の気配を感じつつ急ぐでもなく墓参りかな 九月二十一日

道々に花々愛でつ語らひて義母と歩めば風は澄みゆく 九月二十一日

栗菓子をこしらえ午後は墓参り命に感謝し白秋過ごす 九月二十一日

碧き海その底深く落ちるようにゆらりゆらりと眠りましょうか 九月二十一日

藁塚は夜露に包まれしっとりとまたたく星に抱かれ眠る 九月二十二日

切なくてやり切れなくて苦しくてふと探してる非常階段 九月二十二日

この夜は何故だか涙ぽろぽろと歌のかけらと共にこぼれる 九月二十二日

さみしいと云われることは好きじゃなくされど云いたし我が儘だから 九月二十二日

手さぐりで彷徨ひ歩く深き闇ただ仄見ゆる蒼き空白 九月二十二日

満ち潮に足をとられて目を覚まし夢占いなどひも解いてみる 九月二十三日

仲の秋月待ちながら夜もすがら君詠む歌を口遊みをり 二十三日

寄る辺なきこの身に白き月影ぞ雲の間に間にさやけく降りぬ 九月二十三日

朱の帛紗衣ずれの音に炉の揺らぎ薄茶の景に古ふかし 九月二十三日

秋半ば蒼き稜線みつめればまどろめる君の面影ぞ立つ 九月二十三日

君の背をお江戸追へどもつれなくも振り切られつつ一心に抱く 九月二十四日

秋風に吹かれ野末の草の花さみしさの種音なくこぼし 九月二十四日

白露に枕ぬらしてわが想ひしづと朽ちなむ花になぞらふ 九月二十四日

星降りぬ木末伝ひて手の中にそっと包みて夢へ連れゆく 九月二十四日

てのひらをそっと開いて小さき窓時計表示のままにため息 九月二十四日

草陰にまっすぐ降りぬ月しずく受けて応えて秋を奏でる 九月二十五日

さむしろに衣かたしき闇浮かぶ君の面影たぐりて眠る 九月二十五日

漆黒の闇に煌めくひとつ星差し伸ぶる指の届かぬを知り 九月二十五日

墨染の夕べに淡き月観ればいざよふ胸の内ぞ澄みゆく 月二十五日

秋ふけて朝な夕なにおく露に色香褪せなむ曼珠沙華かな 九月二十六日

秋深み日ごとに空は高き蒼溶けゆく雲は変わらない白 九月二十六日 

秋の香をほの聞く風はやわらかに朝の心をじんわり溶かす 九月二十六日 

ひとり寝の夢に探りし手枕に見紛ふ褥乱れ乱れて 九月二十六日

髪切りて己が気合を入れ直し一直線に仕事復帰へ 九月二十六日

澄み渡る空に灯りし月一輪ながむる吾の心染めたる 九月二十七日

懐かしの小径訪ねて草垣に忍びつ咲きぬ野菊一輪 九月二十七日

秋の夜はいと長けれど君が夢うたかたのごと刹那消え入る 九月二十七日

墨の香をほのかに聞きし秋の午後つたなき歌をしたためをりぬ 九月二十七日

夕されば上つ弓はり灯る空つかず離れずひとつ星追ふ 九月二十七日

夕さればついに落ち初む秋雨に向ひし吾子の帰り待ちわぶ 九月二十八日

久方のデスクに近づく恐る恐る噴火でできたうず高き山 九月二十八日 

秋の窓湯上がりの熱冷ましつつ虫の歌など読み解きをりぬ 九月二十八日

今まさに心近きに語らへば悟りの境地の如くおだゆむ 九月二十八日

雨音に耳そばだてて秋の夜老い猫まろく吾に寄り添ひぬ 九月二十八日

闇の夜のしじまにページめくる音読みふけるその横顔が好き 九月二十九日

時折の痛みしのいで雨音に心かたむけぽつぽつ数え 九月二十九日

大切にぶどう洗って掬いあげこぼれた粒を含んで涙 九月二十九日

誰がためか葉陰ひそかに紫の香をはなちつつ葛の花ゆく 九月三十日

さまざまな思いで過ぐるこの九月さらりさらりと夜に去りゆく 九月三十日

計 117首

9月は入院生活一色といった感じ。

オペ後の起き上がれない時以外は病院でもほぼ上限いっぱいまで

詠んでいた。ヒマってこともあったと思うし日常と違った新鮮な景色も

あった。ある意味良い経験の時間だった。

 

ところでなぜ突然うたのわの歌をブログへ貼りつけたかと言うと・・・

跡形もなく消し去るため。それでも今まで詠んできた歌は記録に残して

おきたかったから。

なぜ跡形もなく消し去ろうと思ったかといえば、評価ばかり気にしてしまって

純粋に歌を楽しめなくなってきたから。

ただそれだけのこと・・・

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